(1)カウンセリングに活かせる点とは
(2)心理士が主体的にカウンセリングに必要な事実を取りだす
(3)五感器官を総動員して相手の変化を捉える
(4)上達のためには身近な困りごとを解決していく必要がある
(5)責任と明確な問いかけをもって相手と関わっていく
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(1)カウンセリングに活かせる点とは
昨年の夏に,『医学教育 概論(1)』の感想を本ブログ上に掲載した。本稿は,その続編である。
前稿では導入として,「公認心理師」法案について触れた。その後の経緯を簡単に紹介しておきたい。公認心理師法案は前回の通常国会で継続審議となり,秋の臨時国会で成立する予定であった。しかし,委員会での審議が行われる直前に,ご承知のように,衆議院が突然解散されたため,廃案となってしまった。今年の通常国会で成立するかどうかは不明である。が,心理士関係の団体の中には,同内容の法案をもう一度提出して,今度こそ成立にこぎつけようと運動されているものも少なくない。
公認心理師法案に触れた後,前稿では心理士が医学から学ぶことという視点で,『医学教育 概論(1)』の感想を認めた。その最終回では,その内容を端的に,以下のようにまとめておいた。
「以上を再度,端的にまとめてみよう。そうすると,医師を目指す場合は,ゴール=医師像にすべてを収斂させながら学んでいかなければならないが,そのゴール=夢だけではなく,不安もしっかり抱いておく必要がある,すなわち,医師には臆病といってよいほどの細心さが必要なのであり,それに裏打ちされた主体性ある決断力が求められる,そのような決断ができるためには,「病気とは正常な生理構造が生活過程で歪んだ状態である」という病気についての一般論をしっかりと自分の実力と化していく研鑽が必要である,ということになるのではないだろうか。ゴールである医師像には,臆病といってよいほどの細心さに裏打ちされた主体性ある決断を下すということも含まれており,そのような決断を下せるようになるには,つまり,ゴールに辿り着くには,どうしても正常な生理構造と異常な生理構造を統一して把握する必要があるのだ,ということだと思う。
そしてこのことは,臨床心理士を目指す場合も,論理的にはまったく同じことがいえるだろう。すなわち,臨床心理士を目指す場合は,ゴール=臨床心理士像にすべてを収斂させながら学んでいかなければならないが,そのゴール=夢だけではなく,不安もしっかり抱いておく必要がある,すなわち,臨床心理士には臆病といってよいほどの細心さが必要なのであり,それに裏打ちされた主体性ある決断力が求められる,そのような決断ができるためには,正常な認識の一般論を踏まえて,それが歪んでいく過程,そしてその結果としての異常な認識のあり方をしっかり理解するための研鑽が必要である,ということになるのである。
ゴールにすべてを収斂させながら学んでいくというのは,あらゆる学びに当てはまる論理であるし,医師も臨床心理士も,ともに下手な介入をすれば相手の命に関わるという点でも共通性がある。さらに,臨床心理士はいわば認識の「病」を対象として,それを回復させるのが仕事であるから,そういう意味でも医師と共通性があるといえる。したがって,『医学教育 概論』のシリーズは,ほとんどそのまま臨床心理士が学ぶべき内容として,読みかえても問題がないといえるだろう。」
このように前稿では,心理士が『医学教育 概論(1)』から何を学べる点として,すべてをゴールに収斂させながら学んでいく必要があること,夢と同時に不安も描きながら主体性ある決断をできるようにしていかなければならないこと,そして,認識一般論を踏まえて認識の歪みをしっかりと把握できるようにしていく必要があることを説いたのであった。
このような前稿の続編として,本稿では,�P江千史・本田克也・小田康友・菅野幸子『医学教育 概論(2)』を読んで学んだことを,主として筆者の専門であるカウンセリング(心理臨床)にどのように活かせるのか,認識論的にはどのような学びがあったのか,という観点から,認めていきたいと思う。
初回の最後に,本書の目次を引用しておく。しっかり目を通して,アバウトな内容を掴んでほしいと願っている。
医学教育概論 (2)
第7課 医師が診断・治療に必要な事実を取りだす過程とは
(1) 本講義第一巻の要旨 ―医学生として学ぶべきことは何なのか
(2) 現在,医師としての「もののみ方・考え方」の基本線の教育が注目されている
(3) 対象と関わって事実を取りだすのは人間の認識である
(4) 医師の診断に必要な事実とは何か
(5) みることが困難な事実を内部構造に分けいって取りだすとは
(6) 病気に至る過程の事実を患者との会話によって取りだす方法
(7) 無限の事実から必要な事実を取りだすことが診断の第一歩である
医学生の学び ― Propylaen zur Wissenschaft 7 ―
第8課 「身近な病気」を「病気の一般論」からみる訓練をしよう
(1) 本書の使命は医師としての実力を養成することにある
(2) 医師として必要な事実を取りだす実力はどのようにして養うのか
(3) 身近な病気を対象に,事実を取りだす基礎的訓練を行う
(4) 病気の事実を取りだすために必須のものとは何か
(5) 必要な事実を取りだすための「病気とは何か」の一般論
(6) 病気の一般論から事実を取りだす「実習症例」をみてみよう
(7) 病気に至る過程の必然性を理解する必要がある
(8) 病気の一般論を把持してこそ患者の診断・治療が可能となる
(9) 「身近な病気へのアプローチ実習」で,医師の基礎的実力は養成できる
医学生の学び ― Propylaen zur Wissenschaft 8 ―
第9課 医師としての実力養成に医術の上達論が必要である
(1) 医師としての実力養成は基礎的な医術の訓練から
(2) 医師としての実力養成は現実の患者と関わることによってこそ
(3) 医学部の実践教育は実力養成のための医術上達論を無視している
(4) 医師への実践教育は段階的上達過程を辿らせなければならない
(5) 医学生の抱える医師としての重大な欠陥を問う
(6) 現実の人間の生活的反映のない知識の習得で合格した医学生の欠陥とは
(7) 現実の対象を反映した像を描く実力に欠ける医学生
(8) 医学生は人間の生活的外界を反映させる感覚器官の実力が育っていない
(9) 人間として育てそこなった感覚器官や脳を医術へむけて再生させるには
医学生の学び ― Propylaen zur Wissenschaft 9 ―
第10課 医師の診断技術の根本は五感器官を駆使して病気の全体像を描くことにある
(1) 医師の実践に五感器官の実力がいかに重要かを説く
(2) 医師の実践は五感器官を総動員して病気の像を描く訓練をすることから始まる
(3) 検査は医師が描いた病気の全体像を確認するための補助手段でしかない
(4) 診察でまず重要なのは五感器官を駆使した患者の望診(全身状態の観察)である
(5) 〔症例3〕検査であきらかな異常のなかった重症患者を問う
(6) 研修医の観察が患者の急変の発見を可能にしたのはなぜか
(7) 診断の基本は医師が病気への全体像をアタマに描けることである
医学生の学び ― Propylaen zur Wissenschaft 10 ―
第11課 『医学教育概論』第一巻・第二巻を概括する
(1) 患者の事実から病気の全体像を描くことの学びが医療実践の基本となる
(2) 「医学概論」のイントロダクションとして医師とは何かを説く
(3) 医師とは何か,医術とは何かを具体的に描くための症例検討
(4) 患者から医術に必要な事実を取りだしてくる訓練がまず必要である
(5) 「病気とは何か」の一般論を指針に事実を取りだす訓練過程をみてみよう
(6) 現実の人間の生活的対象と関わる実力が不足している医学生の現状
(7) 受験秀才を医師にすることを前提とした医学教育改革の歪みを直視しよう
医学生の学び ― Propylaen zur Wissenschaft 11 ―

