現代の日本においては、経済の長期的低迷から脱する糸口として、TPPをはじめとする自由貿易協定に大きな期待がかけられている情況があります。しかし、「内需に期待できないから外需を取り込まなければ」という安直な発想で自由貿易を推進し対外依存を強めていくことが、国民経済の健全な発展や国民生活の安定性にとって、本当にプラスになるのでしょうか。
こうした問題意識を踏まえつつ、本稿においては、古代ギリシャのアテネ、より具体的には、ギリシャ世界全体に及ぶ混乱のなかですでに衰退期に入っていたアテネに目を向けてみたいと思います。それは、ポリス社会の解体を何とかして食い止めようとして思索したプラトンやアリストテレスらの「経済思想」が、現代日本に生きる私たちにとって少なからず示唆を与えてくれるものであるように思われるからです。
本稿では、以上のような観点を踏まえつつ、プラトンの『国家』、クセノフォンの『オイコノミコス』、アリストテレスの『政治学』の3つの文献を取り上げて、古代ギリシャの経済思想について検討していくことにします。
以下、目次(予定)です。
古代ギリシャの経済思想を問う
――プラトン『国家』、クセノフォン『オイコノミコス』、アリストテレス『政治学』を読む
序論
(1)経済のグローバル化と国民経済の衰退
(2)古代ギリシャの“経済思想家”たちは何を考えていたのか
本論
1、プラトン『国家』の経済思想
(3)『国家』は如何なる問題意識によって書かれたのか
(4)プラトンは国家成立の根拠を社会的分業に見出した
(5)プラトンにおいては社会的分業が直接に正義であった
2、クセノフォン『オイコノミコス』の経済思想
(6)『オイコノミコス』は如何なる問題意識によって書かれたのか
(7)有限な家財・労働力の機能を最大限に発揮させることの重視
(8)労働者の育成および指揮の大切さを強調
3、アリストテレス『政治学』の経済思想
(9)『政治学』は如何なる問題意識によって書かれたのか
(10)国家的共同体を家的共同体の複合体として把握した
(11)金銭的な儲けを目的とした交換を否定した
結論
(12)欲求の無限の発展に歯止めをかけて共同体を維持することが眼目であった
(13)国民経済を再建し持続させていくことこそ最大の課題である

