今回から5回にわたって,瀬江千史『〔改訂版〕育児の生理学』(現代社,2007年,初版は1987年)の感想文を認めていきたい。来年から,南郷継正先生らの医学や看護学に関わる著作を復習して,その感想文をブログに掲載していく予定であるが,その準備のための試論である。また,直接的には,筆者が最近,父親になったので,しっかりと育児の指針を掴むためでもある。
本書を読むのは4回目であり,以前読んで以来,4年もの年月が流れてしまった。今回読み返してまず抱いた感想は,「これは育児相談の形式をとった学問書そのものである!」というものであった。副題に「医学から説く科学的育児論」とあるが,これにウソ・偽りはなく,言葉の厳密な意味で,文字通り「医学」から説かれた「科学的育児論」であると痛感した。初版は1987年であるから,今から25年以上も前にこの高みに到達されていたことに驚きを禁じ得ない。
本書ではまず,「�T.からだの仕組みから病気への構造」として,体のしくみの全体像が示され,その後,代謝器官→感覚器官・運動器官→統括器官の順に説かれていく。続いて,「�U.「認識」の発達と「認識」への働きかけ」では,人間の人間たるゆえんである認識について,その基本から育児上の問題に関わるテーマまで,詳細に説かれている。「�V.子供をとりまく生活環境」では,食事や衣類などの外界に関わる注意点が,人間の本質を踏まえて説かれていく。最後の「�W.育児とはなにか」「�X.終章」では,育児相談という形式をとらずに,育児とは何かや育児学が医学体系の中にどのように位置づけられるのかが学問的に説かれている。
このような流れの本書から,何を学べばいいのであろうか。それについては,瀬江先生が次のように説かれている。
「育児において,その情熱を正しい方向へ注ぐためにも,要求されることは次の二点です。すなわち,第一に『人間とは何か』の大きな視点をもつことであり,第二に『対象をみぬく力』を養うことです。」(p.283)
「育児を担う者は,子供を人間として立派に育てあげるためには,ただ愛情や情熱だけでは充分ではありません。何度もくりかえすように,『人間とは何か』という大きな視点にたった人間観と,対象(すなわち子供)をみつめていく科学的なみ方が要求されるのであり,本書からはそれを学んでほしいのです。」(p.292)
本稿でも,人間観と科学的なみ方という二つをきちんと学びとることを目的として,感想を書いていきたいと思う。
以下に,『育児の生理学』の目次を掲載しておく。さらに細かい項目まで載っている目次は,現代社のサイトにあるので,必要に応じて参照していただきたい。
『育児の生理学』目次
まえがき
�T.からだの仕組みから病気への構造
1.人間のからだ<その1>
(1) からだの仕組み
2.代謝器官
(2) 胃腸とは
(3) 肝臓とは
(4) 腎臓とは
(5) 心臓とは
(6) 皮膚とは
3.感覚・運動器官
a.感覚器官
(7) 眼とは
(8) 耳とは
(9) 鼻とは
b.運動器官
(10) 人間にとって運動とは何か
4.統括器官
(11) 脳とは
(12) 神経とは
(13) ホルモンとは
5.人間のからだ<その2>
(14) 抵抗力とは
(15) 発熱とは
(16) 先天異常とは
(17) 薬とは
�U.「認識」の発達と「認識」への働きかけ
(1) 認識とはなにか
(2) 認識の形成過程
(3) 言語の発達
(4) 排泄のしつけ
�V.子供をとりまく生活環境
(1) 食事
(2) 衣類
(3) 入浴
(4) 環境温度
(5) 生活のリズム
(6) 事故
(7) 集団生活
�W.育児とはなにか
(1) 人間は育てられて人間になる
(2) 「教育一般」のなかでの「育児の特殊性」
(3) 子供の個性は生活過程でつくられる―松田育児論批判
(4) 育児に何が必要か
�X.終章
あとがき
索引

