(1)報告レジュメ(前半部分)
(2)報告レジュメ(後半部分)および提示された論点
(3)論点1:大学はどのように成立したのか?
(4)論点2:西欧中世における科学的認識の特徴とは?
(5)論点3:西欧中世の科学史上の意義とは?
(6)参加者の感想
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(1)報告レジュメ(前半部分)
2012年5月の例会では、シュテーリヒ『西洋科学史』(現代教養文庫、全5冊)の第7章「保存と潜在――西欧中世の科学」を扱いました。科学史における二つの主要期、すなわち、古代ギリシャの成果がヘレニズム、イスラムへと継承された時代と、15〜16世紀以降の近代科学の時代とを、中世ヨーロッパがどのように媒介したのか、という問題が論じられています。
今回は、例会のはじめで報告されたレジュメのうち、前半部分を紹介します。後半部分は、次回に掲載します。
1.科学史上の中世の位置
中世は,新文化の基盤が作られていき,地中海世界に保たれていた科学的伝統が流れ込んできた時代である。ヨーロッパの西部・北部にいた若い諸民族,ローマの組織力,古代からの精神的伝統,キリスト教が,ある時には科学の発展を促進し,ある時には阻んだ。
2.阻害する力
11世紀までは,しっかりとした社会組織を作るという実際的課題のみで手一杯であり,科学的活動に力をさくことはできなかった。全ては宗教の下に位しており,中世の全世界に影響を及ぼしたスコラ哲学は,経験的科学の養成に好都合ではなかった。また,プラトンの哲学を中心に,継承されてきた大量のものを取り入れ,消化するのが先決であって,「研究」をはじめることはできなかった。
3.保護と促進の力
12世紀になると,イスラムと接触し,ギリシアの資料を知ったことによって,精神的発展に驚くべき転回が認められるようになる。精神活動と科学的関心を活気づけた一連の力として,第一に普遍的秩序という理想を教えたローマの法律制度,第二に古典的伝統を庇護した宗教と教会,第三に秩序ある厳密な思惟を養成したスコラ哲学が挙げられる。
4.イスラム世界との接触,反訳時代
12世紀は反訳の時代であった。スペインのトレドやシリアを通して,アラビア語からラテン語へ文献の翻訳が行われた。また,ギリシア語から直接に反訳されることも多くなり,13世紀末には反訳事業は完結した。
5.大学の開花
高等教育機関は修道院などの宗教施設に限られていたが,ギリシアの知識が流れ込み,精神活動が高まると,12世紀末から大学が現れはじめた。
6.中世の認識理想
中世において,認識は真理の直観であり,真理は神の中にあるとされた。一元性と普遍性が追求され,あらゆる事物がもつとされた目的が考察された。�T 数学と天文学
1.西欧数学の誕生――ピサのレオナルドとヨルダヌス
12世紀まで,ヨーロッパでは割り算が奥義とされるほど数学の力が低かった。レオナルド・フィボナッチは『ソロバンの書』(1202)でアラビア数字の体系を記述した。また,方程式や数列の理論も手がけた。彼の好敵手・ヨルダヌスは西欧数学思想の先駆者である。
2.オレスメのニコラウス(1320〜1382)
ニコラウスは国家経済を専門的に扱った最初の著作をラテン語とフランス語で書いた。数学では函数とその図示法を扱い,天文学では地動説を吟味し,占星術と闘った。�U 物理学と化学
1.ヨルダヌス
物理学を西欧で独立させる草分けとなった。力学に関するヨルダヌスの公理を発見した。
2.ペトルス・ペリグリヌス
実験に基づいて磁石の現象を述べる。自然科学史上で一つの一里塚。ベーコンの師。
3.ロージャ・ベーコン(1214〜1292)
1268年に知人であった教皇に自著を送った。が,その後フランシスコ会と対立し投獄され,15年間獄につながれた。釈放後まもなく亡くなった。
『大著作』では,誤りの原因(アリストテレスの権威を引き合いに出すことなど)や言語,光学が研究されている。実験的科学についての章では,法則の発見には実験,その定式化には数学が必要だと説かれている。また,認識した法則の実際的利用に関する考え方も述べられている。終章では,あらゆる哲学分野の女王である道徳哲学は,宗教の中に基盤があるとされている。実験と数学の意義を認めた点は高く評価できる。
4.化学
錬金術の流布や産業分野での技術改良によって,科学的化学への数歩が踏み出された。�V 生物学
1.生物学一般,自然学者と動物寓話,ビンゲンのヒルデガルト
中世を通して,遠国の動植物に関しては荒唐無稽でいんちきな観念が風靡していた。人々は教化のための動物寓話の話を真に受けていた。しかし,ヒルデガルトのように,通俗的観念を脱して独自の観察をし,事実をありのままに記述する科学者も現れてきた。
2.フリードリヒ�U世(1194〜1250)
シチリアに宮廷をもつフリードリヒ�U世は,1224年に最初の国立大学・ナポリ大学を創設した。動物界を偏愛し,『トリを用いる狩りの技術について』という図解本を書いた。
3.アルベルトゥス・マグヌス(1193〜1280)
トマス・アクィナスの師で,アリストテレスの注釈書を著す。「実験(≒体験)のみが確証する」と書き,近代的意味での正しい実験も行っている。自分の体験に基づいて動植物をありのままに観察し,過程を正確に記載する能力を開拓した。
4.メーゲンブルクのコンラート
ドイツ語で書かれた最初の自然科学書『自然の書』を書いた。

