2014年10月29日

全てを強烈な目的意識に収斂させる――一会員による『医学教育概論の実践』の感想(1/5)

目次

(1)見事な変身を描いた教養小説とでもいえる中身
(2)社会と認識を学ぶために小説を読む
(3)全体から部分へと学んでいき,常に全体に位置づける
(4)医学教育概論の実践とは自分の事実で説くこと
(5)北條亮先生に負けない強烈な目的意識を!


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(1)見事な変身を描いた教養小説とでもいえる中身

 今年8月の末に,北條亮『医学教育概論の実践―ある医学生の学び』(現代社)という本が発刊された。これは,『綜合看護』誌上において連載されていた「次代を担う看護学生・医学生への医学概論教育講座」の中の「医学生の学び」と題する文章がもととなっている。同じ内容は,すでに単行本化されている『医学教育概論』(1)〜(5)にも収録されているが,その中の(3)の途中までの内容(医学部の4年生までの内容)を独立化させたのが本書である。

 本年,筆者は『医学教育概論』(1)の感想文を本ブログに認めた。その中で,「医学生の学び」の内容を取り上げたいとは思っていたが,本論について書きたい内容が多かった関係で,それは叶わなかった。その後,(2)以降も感想を書いてく予定であったが,本『医学教育概論の実践―ある医学生の学び』が出版されたこの機に,(2)以降の感想文は保留として,先に『医学教育概論』(1)の感想文では触れられなかった「医学生の学び」の部分の感想を認めることにした次第である。

 本書の著者は北條亮先生である。実は筆者は,『綜合看護』誌上で「医学生の学び」が連載されていた当初,この「北條亮」(連載時は「北条」という表記であったが)なる人物は,南郷継正先生が創作された架空の人物ではないかと疑っていた。南郷先生が医学生に二重化して,理想的な学び方を実践されて,それをレポートに書かれているのではないか,と思ったのである。なぜそう思ったのかというと,単なる医学生にしては,あまりにもその学び方が見事であったから,に尽きる。

 もちろん,まだその可能性がないではないが,本書の「まえがき」を読むと,どうやら実在の人物のようである。北條先生は,「田舎の三流というより五流,いや末流と言った方がよい最低の高校を卒業後,三流以下とも言える大学の文系に進み,特にこれといった目標も掲げられず,将来の夢もなんにも描かずにただ漠然と無味乾燥な日々を送ってい」(p.4)たという。

 そんな北條先生が「信じがたい偶然の出来事」のために『なんごうつぐまさが説く看護学科・心理学科学生への“夢”講義』に出会って,弁証法と認識論をまじめに学んでいった結果,「見事な変身」を遂げることになっていった,という。本書はまさに,北條先生の変身・成長のプロセスを描ききった教養小説とでもいえるのではないかと感じる内容であった。もう少しいうと,「まともな医師になるために」という明確な目標に向かって突き進んでいかれた様子が描かれたレポートである。本稿では,本書を読んでの感想を認めることによって,北條先生の学びのプロセスを学び,それを我々の研鑽に活かしていくことを目的としたい。

 というのも,我々京都弁証法認識論研究会の会員も,南郷継正先生を理論的に信じ切って,究極的には南郷継正先生に二重化する=南郷理論を再措定し,あわよくばそれを社会化し,さらに発展させていくことを目標として,努力を続けている同志だからである。我々も,南郷先生に学んで「変身」を成し遂げんとして努力している者だからである。要するに,北條先生と我々は,専門領域こそ違えど,目指す方向は全く同じといっていいのであるからして,北條先生の実践は,確実に我々の学びにも活かしていけるからである。だからこそ,しっかりと北條先生の学びのプロセスを掴んでいきたいのであり,そのためにこその本稿なのである。

 本書についての具体的な感想は次回以降,3回にわたって認めていく予定である。次回は小説の学びという観点から本書に学んでいきたい。次々回においては,本書から読み取れる学びの順序について考察したい。その次には,北條先生がこのようなレポートを書き続けてこられたこと自体に焦点を当てて感想を認めたいと思う。

 では,今回の最後に,本書の目次を掲載しておこう。


医学教育概論の実践
 

■第1部 医師になるためのアタマの働かせ方とその実践
       ―一般教養の実力を養う
 
 第1章 医学部受験科目も「医師になるために」と位置づけて
 第2章 具体的に医師像を描く
       ―ある診療所を見学して
 第3章 「病気とは何か」について学ぶ
 第4章 医師と看護師 その役割とアタマの働かせ方の違いについて学ぶ
       ―祖父の入院に付き添って
 第5章 人間を体系的に捉えるとは
       ―医学部1年生の授業の受け方
 第6章 「ココロ」のこもった会話とは
       ―相手の言葉を相手の立場で考えて視えてきたもの
 第7章 「病気」と「診断」と「治療」の一般的な像を描く
       ―『暮らしの医学』を学んで
 第8章 唯物論を把持し弁証法を駆使するとは
       ―『新・頭脳の科学』を学んで
 第9章 医療実践と看護実践の違いについて
       ―看護実習から視えたもの
 
■第2部 基礎医学の学びを語る
 
 第1章 生きた人間の実体をアタマの中に構築するとは
       ―人間が生きているとはどういうことかに収斂させる
 第2章 解剖学と生理学の学び方
       ―五感覚器官で感じてアタマの中で論理的に体系化させる
 
■第3部 臨床医学の学びを語る
       ―「生きている人間から考える」を実践する
 
 第1章 生きている人間の全体像の中に知識を論理レベルで
       位置づけることの困難さ
 第2章 生きている人間にとって「腎臓とは何か」を学ぶ
 第3章 生きている人間にとって「循環とは何か」を学ぶ
 第4章 生きている人間にとって「呼吸とは何か」を学ぶ
 第5章 生きている人間にとって「生化学とは何か」を糖尿病から学ぶ
 第6章 「人間とは何か」の一般論から「小児科」を学ぶ
 第7章 「生命体とは何か」の一般論から「感染症」を学ぶ
 第8章 病気には病気に至る過程があることを実感する
       ―糖尿病患者との対話を通して
 
■第4部 病気の「知識」から「診断学」へ
 
 第1章 『内科診断学』の学びは知識を実践に即して引き出す訓練である
 第2章 これまでの学びの過程はその内容も順番も正統な流れを
       積み重ねている

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 ・哲学の歴史の流れを概観する
 ・『ビリギャル』から何を学ぶべきか
 ・必要な事実を取り出すとは――一会員による『医学教育 概論(2)』の感想
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 ・アダム・スミスは古代ギリシャ哲学史から何を学んだのか
 ・マインドフルネスを認識論的に説く
 ・道徳思想の歴史を概観する
 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』第1部の要約
 ・弁証法的に学ぶとはいかなることか――一会員による『医学教育 概論(3)』の感想
 ・一会員による『学城』第1号の感想
 ・新大学生への訴え
 ・2015年3月例会報告:ヘーゲル『哲学史』哲学史の序論A
 ・心理職の国家資格化を問う
 ・5年目教師としての1年間を実践記録で振り返る
 ・文法家列伝:時枝誠記編
 ・2015年4月例会報告:ヘーゲル『哲学史』哲学史の序論B、C、東洋哲学
 ・夏目漱石を読むB――三四郎、それから、門
 ・臨床心理学のあるべき姿を考える――一会員による『医学教育 概論(4)』の感想
 ・アダム・スミス「模倣芸術論」を読む
 ・デューイの教育論の歴史的な意義を問う―『学校と社会』を通して
 ・2015年5月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ギリシア哲学史の序論、イオニア派の哲学、ピュタゴラスとピュタゴラス派
 ・高木彬光『邪馬台国の秘密』を認識論から読み解く
 ・一会員による『学城』第12号の感想
 ・2015年6月例会報告:ヘーゲル『哲学史』エレア派〜ヘラクレイトス
 ・何故言語学の創出が必要か―一会員による2015年上半期の振り返り
 ・事実と論理ののぼりおり――一会員による『医学教育 概論(5)』の感想
 ・夏目漱石を読むC――彼岸過迄、行人、こころ
 ・2015年7月例会報告:ヘーゲル『哲学史』エムペドクレス〜アナクサゴラス
 ・フロイト『精神分析入門』を読む(上)
 ・デューイ教育論の歴史的意義を問う―『民主主義と教育』をとおして
 ・2015年8月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ソフィスト派・ソクラテス
 ・アダム・スミス『法学講義』を読む
 ・学問上達論とは何か――一会員による『哲学・論理学研究(1)』の感想
 ・2015年9月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ソクラテス派、プラトン
 ・庄司和晃追悼論文―庄司和晃の歩みはいかなるもので、何を成し遂げたか
 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』第1部第4章の要約
 ・一会員による『学城』第2号の感想
 ・フロイト『精神分析入門』を読む(下)
 ・夏目漱石を読むD――道草、明暗
 ・2015年10月例会報告:ヘーゲル『哲学史』プラトン 弁証法、自然哲学、精神の哲学
 ・ナイチンゲール看護論を心理臨床に活かす――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(1)』の感想
 ・文法家列伝:時枝誠記編(補論)
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 ・2015年11月例会報告:ヘーゲル『哲学史』アリストテレスの形而上学,自然哲学
 ・2年間の育児を振り返る
 ・2015年12月例会報告:ヘーゲル『哲学史』アリストテレス(精神の哲学・論理学)
 ・年頭言:歴史的岐路における道標としての学問の創出を目指して
 ・安保法制をめぐる議論から日本の課題を問う
 ・図式化にはどのような効用があるのか
 ・看護師と臨床心理士に共通した学び方――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(2)』の感想
 ・2016年1月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ストア派の哲学、エピクロスの哲学
 ・ケネー『経済表』を読む
 ・SSTを技化の論理で説く
 ・一会員による『学城』第13号の感想
 ・2016年2月例会報告:ヘーゲル『哲学史』新アカデメイア派、スケプシス派
 ・心理士教育はいかにあるべきか――一会員による『医学教育 概論(6)』の感想
 ・仮説実験授業を問う―アクティブ・ラーニングの観点から―
 ・一会員による『学城』第3号の感想
 ・新大学生に与える
 ・2016年3月例会報告:ヘーゲル『哲学史』新プラトン派
 ・6年目教師としての1年間を実践記録で振り返る―学級崩壊への過程を説く
 ・2016年4月例会報告:ヘーゲル『哲学史』中世哲学序論〜スコラ哲学
 ・専門家のあり方を問う――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(3)』の感想
 ・比較言語学誕生の歴史的必然性を問う
 ・『吉本隆明の経済学』を読む
 ・2016年5月例会報告:ヘーゲル『哲学史』学問の復興
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 ・夏目漱石の思想を問う
 ・コメニウスの歴史的意義を問う―『大教授学』をとおして
 ・オバマ米大統領の「広島演説」を問う
 ・2016年6月例会報告:ヘーゲル『哲学史』近代哲学の黎明
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 ・夏目漱石の中・長編小説を読む
 ・2016年7月例会報告:ヘーゲル『哲学史』デカルト・スピノザ
 ・改訂版・観念的二重化への道
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 ・文法家列伝:ソシュール編
 ・2016年8月例会報告:ヘーゲル『哲学史』「悟性形而上学」第二部・第三部
 ・どうすれば科学的な実践が可能となるか――一会員による『科学的な看護実践とは何か(上)』の感想
 ・夏目漱石『明暗』の構造と結末を問う
 ・ルソーの教育論の歴史的意義を問う
 ・2016年9月例会報告:ヘーゲル『哲学史』バークリー〜ドイツの啓蒙思潮
 ・高校生に説く立憲主義の歴史
 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』を読む
 ・2016年10月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ヤコービ、カント
 ・専門家教育には何が必要か――一会員による『科学的な看護実践とは何か(下)』の感想
 ・アダム・スミス『国富論』を読む
 ・2016年11月例会報告:ヘーゲル『哲学史』フィヒテ,シェリング,結語
 ・3年間の育児を振り返る
 ・近代教育学の成立過程を概観する
 ・2016年12月例会報告:ヘーゲル『哲学史』のまとめ
 ・年頭言:機関誌の発刊を目指して
 ・激動する世界情勢を問う
 ・『障害児教育の方法論を問う』から何を学ぶべきか―一会員による感想
 ・一会員による『学城』第4号の感想
 ・2017年1月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』、ヘーゲル『哲学史』におけるカント『純粋理性批判』
 ・斎藤公子の保育実践とその背景を問う
 ・認識の形成がうまくいくための条件とは何か?――一会員による『“夢”講義(1)』の感想
 ・本来の科学的な教育とは何か
 ・2017年2月例会報告:カント『純粋理性批判』序文
 ・システムズアプローチを弁証法から説く
 ・一会員による『学城』第14号の感想
 ・ルソー『学問芸術論』を読む
 ・新大学生に説く「大学では何を如何に学ぶべきか」
 ・2017年3月例会報告:カント『純粋理性批判』緒言
 ・斉藤喜博から何を学ぶべきか
 ・重層弁証法を学ぶ――一会員による『“夢”講義(2)』の感想
 ・小中一貫教育を問う
 ・ヘーゲル『哲学史』を読む