2013年02月05日

2013年1月例会報告:ヘーゲル『歴史哲学』を読む前提としての世界歴史の全体像(1/10)

目次
(1)報告担当者から提示されたレジュメ
(2)林健太郎『歴史の流れ』要約1:原始社会、オリエント社会、古代社会
(3)林健太郎『歴史の流れ』要約2:古代社会(承前)、中世社会
(4)林健太郎『歴史の流れ』要約3:中世社会(承前)
(5)林健太郎『歴史の流れ』要約4:近代社会
(6)重ねての要約および提起された論点の紹介
(7)論点1:世界歴史の各段階で人類はどのような矛盾を解決してきたのか
(8)論点2:世界歴史の流れを人間の成長過程と対応させるとどうなるか
(9)論点3:「ヨーロッパ中心史観」との批判にどう答えるか
(10)参加者の感想の紹介

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(1)報告担当者から提示されたレジュメ

 2013年、われわれ京都弁証法認識論研究会は、毎月の例会の場において、ヘーゲル『歴史哲学』を読みすすめていくことにしています。1月例会では、『歴史哲学』を読んでいくための大前提として世界歴史を事実レベルで概括しておくことを目的として、林健太郎『歴史の流れ』(新潮文庫)などをもとにした討論をおこないました。

 今回の例会報告では、まず例会で報告されたレジュメを紹介したあと、林健太郎『歴史の流れ』(新潮文庫)の要約を4回に分けて掲載し、ついで、参加者から提起された論点について、どのように議論をしてどのような(一応の)結論に到達したのかを紹介していきます。最後に、この例会を受けての参加者の感想を紹介します。

 今回は、まず報告担当者から提示されたレジュメを紹介します。


ヘーゲル『歴史哲学』を読む前提としての世界歴史の全体像

1.世界歴史とは何か
「世界歴史とは人類の歴史であり、我々人類が社会的労働によって地球との相互浸透をはかり、自らの手で自らを発展させてきた道のりを、社会的生活およびその中核をなす文化に焦点を当てて説くものである。」(加藤幸信「世界歴史とは何か」)

2.原始社会
 生命体は集団で地球との相互浸透を図らなければ生存できないが、本能による統括が薄れ、個性的認識が誕生してきたことにより、集団での相互浸透ができなくなった。この矛盾を解決するために、規範という社会的認識を共同体の成員に定着させるという形態がとられるようになった。
 食料の確保のために共同体の範囲を広げる中で、他の共同体との対峙が生じるようになった。そこで行われる戦争に勝つと同時に、共同体の食料を確保するという仕事を行うために、国家という枠組みを作るとともに、共同体内において軍事と生産の分離が行われ、指導者のもとでそれらが統括された。戦争に敗北した共同体のメンバーは、奴隷として働かされるようになった。

3.オリエント社会
 社会を維持・発展させていくためには食料の確保が重要であり、それが可能な地域は大河流域の肥沃な土地だった。しかし、大河流域はしばしば洪水に見舞われるため、この問題を解決しなければならなかった。そこで支配する共同体の指導者=王がそれぞれの共同体を絶対的な権力で従える巨大国家という形態が創り上げられ、灌漑工事などに取り組んだ。また、そのために必要な測量術や、洪水が起こる時期を予測するための天文学などの文化を発達させた。

4.古代社会
 オリエント社会の文化を引き継いだのが、ギリシア・ローマの古代社会である。ギリシアは山地が連なっていて肥沃な土地が少ないため、土地の防衛のためにいくつかの共同体が統合されて、戦士=市民(農地所有者)の共同体として都市国家(ポリス)がいくつも形成された。やがて人口の増加とともに食料の確保が難しくなると、地中海に乗り出し、植民活動を行う必要が出てきた。征服先の人間は奴隷として本国に送られ、労働の担い手とされた。そこで生産された食料品や手工業品が交易され、商業が活発になった。一方、ポリス市民は直接的な生産労働から解放され、ポリスの維持・発展に関わる諸問題の考察に専念できるようになり、ギリシア哲学と呼ばれる文化が生まれた。このように、古代社会は奴隷を労働力として継続的に確保することによって、社会の維持・発展を行うという社会体制であった。
 諸ポリスは乱立しながらも神話やオリンピアの祭典などにより、精神的なつながりを持っていた。また、ペルシア帝国という共通の敵に対して団結していた。しかし、それらが失われると覇権争いが行われるようになり、マケドニアやローマによって支配され、巨大な帝国が形成されるようになった。特にローマでは、巨大国家を維持・発展させるために法に関わる文化を発展させた。また、奴隷たちに現実の苦役を納得させるための手段としてキリスト教を活用した。しかし、領土の拡大が行き詰まり奴隷の供給を行えなくなると、ローマ帝国は滅亡した。

5.中世社会
 中世社会の初期は、異民族が入り乱れていたため、生活の基盤となる土地の防衛ということが死活問題だった。そこで、農民は土地を武士に寄進することにより、土地を守ろうとした。こうして、領主は土地を武力で守り、農民は税を納めるという荘園制度が成立した。農民は土地に縛りつけられ、一方で家族の形成を認められたので、労働力の再生産が可能となった。こうした枠組みはキリスト教によって正当化された。

6.近代社会
 社会の維持・発展のためには、商業の発展による国家の富の蓄積が必要であったが、封建制度のもとではそれができない。そこで封建領主を打倒する必要が出てくるが、都市の市民のみではそれができない。そこで、国王と手を組んで封建領主を倒し、国王を頂点とする絶対主義国家を形成した。
 やがて、さらなる発展のためには王権さえ不要なものとなり、それを打倒するために市民革命を起こす国々が現れた。
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 ・道徳教育の観点から見る中世の教育と教育思想
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 ・2014年8月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』第39〜40章
 ・アダム・スミス「外部感覚論」を読む
 ・文法家列伝:ジョン・ロック編
 ・一会員による『学城』第11号の感想
 ・夏目漱石を読む@――坊っちゃん、吾輩は猫である、草枕
 ・2014年9月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』第41〜43章
 ・ルソーとカントの道徳教育思想を概観する
 ・アダム・スミスは『修辞学・文学講義』で何を論じたか
 ・全てを強烈な目的意識に収斂させる――一会員による『医学教育概論の実践』の感想
 ・2014年10月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』第44〜45章
 ・精神障害の弁証法的分類へ向けた試み
 ・シュリーマン『古代への情熱』から何を学ぶか
 ・2014年11月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』第46章
 ・一年間の育児を振り返る
 ・近代ドイツにおける教育学の流れを概観する
 ・2014年12月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』のまとめ
 ・年頭言:弁証法・認識論を武器に学問の新たな段階を切り開く
 ・「戦後70年」を迎える日本をどうみるか
 ・哲学の歴史の流れを概観する
 ・『ビリギャル』から何を学ぶべきか
 ・必要な事実を取り出すとは――一会員による『医学教育 概論(2)』の感想
 ・2015年1月例会報告:南郷継正「武道哲学講義X」
 ・夏目漱石を読むA――二百十日、野分、虞美人草、坑夫
 ・アダム・スミスは古代ギリシャ哲学史から何を学んだのか
 ・マインドフルネスを認識論的に説く
 ・道徳思想の歴史を概観する
 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』第1部の要約
 ・弁証法的に学ぶとはいかなることか――一会員による『医学教育 概論(3)』の感想
 ・一会員による『学城』第1号の感想
 ・新大学生への訴え
 ・2015年3月例会報告:ヘーゲル『哲学史』哲学史の序論A
 ・心理職の国家資格化を問う
 ・5年目教師としての1年間を実践記録で振り返る
 ・文法家列伝:時枝誠記編
 ・2015年4月例会報告:ヘーゲル『哲学史』哲学史の序論B、C、東洋哲学
 ・夏目漱石を読むB――三四郎、それから、門
 ・臨床心理学のあるべき姿を考える――一会員による『医学教育 概論(4)』の感想
 ・アダム・スミス「模倣芸術論」を読む
 ・デューイの教育論の歴史的な意義を問う―『学校と社会』を通して
 ・2015年5月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ギリシア哲学史の序論、イオニア派の哲学、ピュタゴラスとピュタゴラス派
 ・高木彬光『邪馬台国の秘密』を認識論から読み解く
 ・一会員による『学城』第12号の感想
 ・2015年6月例会報告:ヘーゲル『哲学史』エレア派〜ヘラクレイトス
 ・何故言語学の創出が必要か―一会員による2015年上半期の振り返り
 ・事実と論理ののぼりおり――一会員による『医学教育 概論(5)』の感想
 ・夏目漱石を読むC――彼岸過迄、行人、こころ
 ・2015年7月例会報告:ヘーゲル『哲学史』エムペドクレス〜アナクサゴラス
 ・フロイト『精神分析入門』を読む(上)
 ・デューイ教育論の歴史的意義を問う―『民主主義と教育』をとおして
 ・2015年8月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ソフィスト派・ソクラテス
 ・アダム・スミス『法学講義』を読む
 ・学問上達論とは何か――一会員による『哲学・論理学研究(1)』の感想
 ・2015年9月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ソクラテス派、プラトン
 ・庄司和晃追悼論文―庄司和晃の歩みはいかなるもので、何を成し遂げたか
 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』第1部第4章の要約
 ・一会員による『学城』第2号の感想
 ・フロイト『精神分析入門』を読む(下)
 ・夏目漱石を読むD――道草、明暗
 ・2015年10月例会報告:ヘーゲル『哲学史』プラトン 弁証法、自然哲学、精神の哲学
 ・ナイチンゲール看護論を心理臨床に活かす――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(1)』の感想
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 ・英語教育改革を問う―『英語化は愚民化』書評―
 ・2015年11月例会報告:ヘーゲル『哲学史』アリストテレスの形而上学,自然哲学
 ・2年間の育児を振り返る
 ・2015年12月例会報告:ヘーゲル『哲学史』アリストテレス(精神の哲学・論理学)
 ・年頭言:歴史的岐路における道標としての学問の創出を目指して
 ・安保法制をめぐる議論から日本の課題を問う
 ・図式化にはどのような効用があるのか
 ・看護師と臨床心理士に共通した学び方――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(2)』の感想
 ・2016年1月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ストア派の哲学、エピクロスの哲学
 ・ケネー『経済表』を読む
 ・SSTを技化の論理で説く
 ・一会員による『学城』第13号の感想
 ・2016年2月例会報告:ヘーゲル『哲学史』新アカデメイア派、スケプシス派
 ・心理士教育はいかにあるべきか――一会員による『医学教育 概論(6)』の感想
 ・仮説実験授業を問う―アクティブ・ラーニングの観点から―
 ・一会員による『学城』第3号の感想
 ・新大学生に与える
 ・2016年3月例会報告:ヘーゲル『哲学史』新プラトン派
 ・6年目教師としての1年間を実践記録で振り返る―学級崩壊への過程を説く
 ・2016年4月例会報告:ヘーゲル『哲学史』中世哲学序論〜スコラ哲学
 ・専門家のあり方を問う――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(3)』の感想
 ・比較言語学誕生の歴史的必然性を問う
 ・『吉本隆明の経済学』を読む
 ・2016年5月例会報告:ヘーゲル『哲学史』学問の復興
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 ・コメニウスの歴史的意義を問う―『大教授学』をとおして
 ・オバマ米大統領の「広島演説」を問う
 ・2016年6月例会報告:ヘーゲル『哲学史』近代哲学の黎明
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 ・改訂版・観念的二重化への道
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 ・2016年8月例会報告:ヘーゲル『哲学史』「悟性形而上学」第二部・第三部
 ・どうすれば科学的な実践が可能となるか――一会員による『科学的な看護実践とは何か(上)』の感想
 ・夏目漱石『明暗』の構造と結末を問う
 ・ルソーの教育論の歴史的意義を問う
 ・2016年9月例会報告:ヘーゲル『哲学史』バークリー〜ドイツの啓蒙思潮
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 ・2016年12月例会報告:ヘーゲル『哲学史』のまとめ
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 ・2017年1月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』、ヘーゲル『哲学史』におけるカント『純粋理性批判』
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 ・本来の科学的な教育とは何か
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 ・新大学生に説く「大学では何を如何に学ぶべきか」
 ・2017年3月例会報告:カント『純粋理性批判』緒言
 ・斉藤喜博から何を学ぶべきか
 ・重層弁証法を学ぶ――一会員による『“夢”講義(2)』の感想
 ・小中一貫教育を問う
 ・ヘーゲル『哲学史』を読む
 ・2017年4月例会報告: カント『純粋理性批判』先験的感性論
 ・文法家列伝:宮下眞二編
 ・改訂版 心理療法における外在化の意義を問う
 ・マルクス思想の原点を問う
 ・2017年5月例会報告:カント『純粋理性批判』先験的論理学の構想その他
 ・弁証法が技化した頭脳活動を味わう――一会員による『“夢”講義(3)』の感想
 ・教育の政治的中立性を問う
 ・日本経済の歴史を概観する
 ・2017年6月例会報告:カント『純粋理性批判』純粋悟性概念の演繹
 ・一会員による『学城』第15号の感想
 ・改訂版 続・心理療法における外在化の意義を問う
 ・2017年7月例会報告:カント『純粋理性批判』原則の分析論 緒言〜第2章第3節2
 ・ルソー『人間不平等起原論』の歴史的意義を問う
 ・夢の解明に必須の学問を学ぶ――一会員による『“夢”講義(4)』の感想
 ・ヒュームの経済思想――『政治論集』を読む
 ・現代日本の政治家の“失言”を問う
 ・2017年8月例会報告:カント『純粋理性批判』経験の類推
 ・障害児の子育ての1年間を振り返る
 ・新しい国家資格・公認心理師を問う
 ・経済学の原点を問う――哲学者としてのアダム・スミス
 ・2017年9月例会報告:カント『純粋理性批判』経験的思惟一般の公準その他
 ・徒然なるままに――40歳を迎えて