2011年03月25日

東日本大震災から国家における経済のあり方を問う(1/5)

目次
(1)序論:未曾有の大惨害をもたらした東日本大震災を受けて(今回)
(2)経済とは人々に生活資料を継続的に届けていく国家の機能である
(3)ともかく救援物資を被災者に届けることが国家の責任である
(4)復興財源は増税ではなく日銀引き受け国債で調達すべきである
(5)結論:国家における経済とは「経国済民」の術でなければならない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(1)序論:未曾有の大惨害をもたらした東日本大震災を受けて

 2011年3月11日、三陸沖を震源にして、「世界最大規模(マグニチュード9.0)」ともいわれる巨大な地震が発生し、激しい揺れとともに巨大な津波が東北地方から関東地方にいたる東日本の広い範囲を襲いました。この地震と津波によってもたらされた被害は、想像を絶するほどに悲惨なものとなっています。太平洋沿岸の多くの都市が壊滅し、死者・行方不明者は2万人はるかに超えました。また、この地震と津波の影響を受けた東京電力福島第一原発では、「緊急炉心冷却装置(ECCS)」が停止してしまったことによって、炉心の損傷や水素爆発、火災などといった深刻な事故が発生し、放射性物質が周囲に漏れ出すに至りました。地震や津波の直接的な被害にとどまらず、これらをきっかけにして発生した深刻な原発事故もくわわった影響で、多くの人々が住む場所や働く場所を奪われ、生活基盤を根本的に破壊されてしまう結果になっているのです。厳しい寒さに耐えながらの過酷な避難生活を余儀なくされている人々は、数十万人にものぼっています。

 私たち京都弁証法認識論研究会は、このたびの東日本大震災によって被災されたすべてのみなさん、とりわけ、いまなお苦しい避難生活を余儀なくされているみなさんに、心からお見舞いを申し上げるとともに、震災によって愛する家族を亡くされた遺族のみなさんに、心からお悔やみを申し上げます。また、自衛隊や警察・消防隊、ボランティアなど、被災地で必死の救援活動を続けているみなさん、福島第一原発の事故を押さえ込むために、現場で必死に奮闘している発電所員や自衛隊、消防隊のみなさんに、心から敬意を表します。私たち自身も、被災地から遠くはなれた京都の地からではありますが、救援募金や救援物資の提供などの面で、できる限りの支援をしていきたいと思っています。

 さて、このたびの巨大な地震と津波によってもたらされた被害は、いくつもの都市を壊滅させてしまうほどに甚大なものであったために、その全容を把握すること自体、困難をきわめているともいわれています。また、東京電力福島第一原発の深刻な事故については、大気や土壌、水の汚染、さらにはそれらを媒介とした食料品の汚染によって、人体へ悪影響をあたえていくことが懸念されています。さらには、「計画停電」などによる交通機関の乱れやガソリンの不足による物流の停滞などによって、直接的な被災地だけではなく、日本社会の全体にわたって、震災による大きな影響が出ています。よくいわれるように、このたびの大震災は、まさに未曾有の国難というほかない深刻な事態をもたらしているのです。

 この未曾有の国難をもたらした東日本大震災が、これからの日本という国家のあり方、ひいては、世界のあり方に大きな影響をあたえるものとなることは間違いありません。人類の歴史的な発展という大きな観点からみた場合、この大震災のあまりに痛ましい犠牲を無にしてしまわないためにも、大震災によってもたらされている事態を、冷静にかつ学問的に考察していくことが欠かせないでしょう。学問の構築を媒介として人類の歴史に貢献していくことを志している私たち京都弁証法認識論研究会としては、この東日本大震災が、人類の歴史的な発展過程においていかなる意味をもつものであるのか、深く掘り下げて検討していく必要があると考えています。

 このような観点から、まず総論的に指摘しなければならないのは、何といっても、未曾有の国難の時期であるからこそ、社会の全体をしっかりと統括する国家のあり方が切実に問われるのだ、ということです。

 そのうえで、具体的に問われなければならない問題はさまざまにあります。たとえば、原発を推進してきた日本のエネルギー政策のあり方は、日本のみならず世界各国のエネルギー政策が今後どうなっていくか、という問題をも視野に入れつつ、根本的に問い直されなければならないものと考えられます。また、今後ますます重要なものとなってくるであろう被災者の心のケアの問題について、唯物論的な認識論をふまえてまともに論じておくことも大切なことでしょう。これらの具体的な問題について、今後、このブログで論じていく(ことができるようになるだけの実力をつくっていく努力をみずからの責任として自覚する)ことにしたいと考えています。

 その第一歩の試みとして、本稿では、国家の土台たる経済、人々の生活(生命の維持)を根本で支える経済のあり方をとりあげて検討してみることにします。具体的には、この大震災の影響が国家の経済に与えている影響をふまえつつ、「そもそも経済とはどういうものなのか」という問題について論じるとともに、そこをふまえて、現局面において切実にもとめられている被災者への救援物資の輸送の問題について、さらには震災からの復興にかかわる財源問題についても簡単に触れておくことにします。
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 ・心理士が医学から学ぶこと――一会員による『医学教育 概論(1)』の感想
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 ・全てを強烈な目的意識に収斂させる――一会員による『医学教育概論の実践』の感想
 ・2014年10月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』第44〜45章
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 ・2014年11月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』第46章
 ・一年間の育児を振り返る
 ・近代ドイツにおける教育学の流れを概観する
 ・2014年12月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』のまとめ
 ・年頭言:弁証法・認識論を武器に学問の新たな段階を切り開く
 ・「戦後70年」を迎える日本をどうみるか
 ・哲学の歴史の流れを概観する
 ・『ビリギャル』から何を学ぶべきか
 ・必要な事実を取り出すとは――一会員による『医学教育 概論(2)』の感想
 ・2015年1月例会報告:南郷継正「武道哲学講義X」
 ・夏目漱石を読むA――二百十日、野分、虞美人草、坑夫
 ・アダム・スミスは古代ギリシャ哲学史から何を学んだのか
 ・マインドフルネスを認識論的に説く
 ・道徳思想の歴史を概観する
 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』第1部の要約
 ・弁証法的に学ぶとはいかなることか――一会員による『医学教育 概論(3)』の感想
 ・一会員による『学城』第1号の感想
 ・新大学生への訴え
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 ・心理職の国家資格化を問う
 ・5年目教師としての1年間を実践記録で振り返る
 ・文法家列伝:時枝誠記編
 ・2015年4月例会報告:ヘーゲル『哲学史』哲学史の序論B、C、東洋哲学
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 ・アダム・スミス「模倣芸術論」を読む
 ・デューイの教育論の歴史的な意義を問う―『学校と社会』を通して
 ・2015年5月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ギリシア哲学史の序論、イオニア派の哲学、ピュタゴラスとピュタゴラス派
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 ・一会員による『学城』第12号の感想
 ・2015年6月例会報告:ヘーゲル『哲学史』エレア派〜ヘラクレイトス
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 ・デューイ教育論の歴史的意義を問う―『民主主義と教育』をとおして
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 ・2015年9月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ソクラテス派、プラトン
 ・庄司和晃追悼論文―庄司和晃の歩みはいかなるもので、何を成し遂げたか
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 ・2年間の育児を振り返る
 ・2015年12月例会報告:ヘーゲル『哲学史』アリストテレス(精神の哲学・論理学)
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 ・図式化にはどのような効用があるのか
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 ・2016年1月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ストア派の哲学、エピクロスの哲学
 ・ケネー『経済表』を読む
 ・SSTを技化の論理で説く
 ・一会員による『学城』第13号の感想
 ・2016年2月例会報告:ヘーゲル『哲学史』新アカデメイア派、スケプシス派
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 ・2016年3月例会報告:ヘーゲル『哲学史』新プラトン派
 ・6年目教師としての1年間を実践記録で振り返る―学級崩壊への過程を説く
 ・2016年4月例会報告:ヘーゲル『哲学史』中世哲学序論〜スコラ哲学
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 ・比較言語学誕生の歴史的必然性を問う
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 ・2016年5月例会報告:ヘーゲル『哲学史』学問の復興
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 ・弁証法が技化した頭脳活動を味わう――一会員による『“夢”講義(3)』の感想
 ・教育の政治的中立性を問う
 ・日本経済の歴史を概観する
 ・2017年6月例会報告:カント『純粋理性批判』純粋悟性概念の演繹
 ・一会員による『学城』第15号の感想
 ・改訂版 続・心理療法における外在化の意義を問う
 ・2017年7月例会報告:カント『純粋理性批判』原則の分析論 緒言〜第2章第3節2
 ・ルソー『人間不平等起原論』の歴史的意義を問う
 ・夢の解明に必須の学問を学ぶ――一会員による『“夢”講義(4)』の感想
 ・ヒュームの経済思想――『政治論集』を読む
 ・現代日本の政治家の“失言”を問う
 ・2017年8月例会報告:カント『純粋理性批判』経験の類推
 ・障害児の子育ての1年間を振り返る
 ・新しい国家資格・公認心理師を問う
 ・経済学の原点を問う――哲学者としてのアダム・スミス
 ・2017年9月例会報告:カント『純粋理性批判』経験的思惟一般の公準その他
 ・徒然なるままに――40歳を迎えて
 ・過程的構造とは何か――一会員による『“夢”講義(5)』の感想
 ・〔改訂版〕新自由主義における「自由」を問う
 ・2017年10月例会報告:カント『純粋理性批判』反省概念の二義性
 ・続・徒然なるままに――40歳を迎えて
 ・教育実習生に説く人間観の歴史