2017年08月23日

夢の解明に必須の学問を学ぶ――一会員による『“夢”講義(4)』の感想(1/5)

目次

(1)本書では学問そのものが説かれていく
(2)学問は原点からの歴史性に学んでこそ措定できる
(3)『弁証法はどういう科学か』旧版のあとがきの意義
(4)認識の成立と社会の関係性
(5)夢の解明のためには学問が必須である

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(1)本書では学問そのものが説かれていく

 本稿は,南郷継正『“夢”講義(4)』を読んで学んだことを,感想文として認めていく論考である。より正確にいうと,感想文を書くことによって『“夢”講義(4)』をより深く理解すると直接に,そこで説かれている内容を自分のものとすることを目的として執筆した論考である。これまでも何度か本ブログでくり返し説いているように,本年は京都弁証法認識論研究会として,組織的に『“夢”講義』シリーズに学んでいくことを一つの目標としている。本稿も,研究会としての議論を踏まえた内容となっている。

 さて,『“夢”講義(4)』は,今回の最後に載せている目次を見ていただければ明らかなように,学問を正面から取り上げての展開となっている。たとえば,第2編は「哲学の成立の過程的構造を説く」であり,哲学や学問の概念がその成立の起源から説かれている。ここでは,いかなる分野であれ,一流を目指すためには哲学や学問に関わる基礎的教養が必要であり,ナイチンゲールにはそれがあったからこそ,看護学の祖としての地位を築くことができたのだと説かれている。また,第4編は「論理学から説く弁証法と認識論」となっており,第5編は「論理学の過程的構造を説く」となっている。ここでは,論理学の観点から弁証法や認識論が説かれ,論理学の歴史性が説かれていくのである。このような目次を眺めれば,本書は「夢」はもちろん「看護」や「武道」とは何の関わりもない,単なる(?)大哲学書,大学問書であると勘違いしてしまいかねないであろう。それほどに,学問や哲学・論理学といったものが,頻繁に顔を出すような構成となっているのである。

 哲学に関わっては,これは日常用語として経営者すらが使っているような意味ではなくて,もっともっと厳しいものであることが,次のように説かれている。

「そもそも,哲学とは森羅万象すなわち全世界をしっかりと把握したいという,古代ギリシャにおける明晰な頭脳活動者(知を愛する人)たちの願望から始まることになったものです。ここから全ての学問レベルの理論的研鑽は始まっていくのです。そしてこれは,かつてのカントやヘーゲルの血のにじむような学問的努力を同じようにくり返すことによって(つまり古代ギリシャから自分の時代までの学問史を学問化する努力を,カントやヘーゲルが行っていたように)こそ,到達可能な道なのです。」(p.75)


「中学生にも分かるように簡単に説けば,学問とは,ある一流大学の学部の博士論文を全て集めて,一本化,すなわち体系化したレベルが底辺のものであり,哲学とは,一流大学の全学部の全ての博士論文の体系的展開であってようやくにして哲学の底辺であり,それでようやく哲学の名に値する実体が形成されてくるのだといってよいものです。」(p.77)


 すなわち,哲学とは,全世界の把握を目指したものであり,そのためには人類の系統発生をくり返すだけの血のにじむような研鑽が必要なのである,中学生にも分かるように説けば,哲学とは「一流大学の全学部の全ての博士論文の体系的展開であってようやくにして哲学の底辺」なのである,ということである。

 別の個所でも,『武道講義第3巻 武道と認識の理論V』が引用され,「哲学とは,『全世界を自らの手のひらに載せること』です。すなわち,全世界=森羅万象を自分の掌を指すがごとくの容易さで論理的に説くことです」「哲学とは,全世界=森羅万象の論理を自家薬籠中の物と化すことである」などと,中学生向きに説かれた後,『南郷継正 武道哲学・著作 講義全集』第6巻からの引用という形で,次のような学問(哲学)の概念規定が紹介されている。

「学問というものは,自然・社会・精神として存在している現実の世界の歴史性,体系性を観念的な実体の論理性として構築し,その内実の歴史的構造性を理論レベルで体系化することである。  南郷継正

 学問とは,客観的絶対精神の実体レベルでの発展形態である自然から社会へ,そして社会から精神への歩みを,主観的精神の絶対精神から絶対理念までの発展的自己運動として捉え返して体系化することにある。〔ヘーゲルが哲学を完成していたら書いたであろう概念規定〕」(p.193)


 このような厳しい厳しい哲学レベルの内容が,本書ではいたるところで説かれているのである。

 さて本稿では,以上のような哲学レベルで説かれている内容について,3つに分けて説いていくことにしたい。初めに,学問的な実力をしっかりと身につけるためには,原点から,その学問の辿ってきた過程を辿り返す必要がある,とされている点を取り上げる。次に,弁証法の基本について,特に,『弁証法はどういう科学か』旧版のあとがきについて説かれている内容を確認したい。最後に,認識の成立と社会の関係性について説かれていることをしっかりと理解できるようにしたい。

 最後に,本書の目次を現代社のサイトから引用しておく。

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なんごうつぐまさが説く
看護学科・心理学科学生への“夢”講義(4)


【 第1編 】 学問的に説く 「脳とは何か」

第1章 学問の歴史における頭脳活動の究明の過程性を説く

 第1節 「認知症予防」 に関する研究者の見解を問う
 第2節 人間の認識の歴史性を説く
 第3節 学問 ・哲学の歴史に学ぶことの意義を説く

第2章 弁証法の学びの構造を 「脳とは何か」 から説く

 第1節 論理的な頭脳活動が可能となる実力とは
 第2節 弁証法の実力は論の展開にその実態が現われる
 第3節 正常な頭脳活動のための二つの条件を説く
 第4節 脳は体全体の統括のための中枢器官である
 第5節 「いのちの歴史」 をふまえた脳の実体論から 「認知症予防」 を説く

【 第2編 】 哲学の成立の過程的構造を説く

第1章 哲学の形成の過程的構造を説く

 第1節 「学問への道」 「武道への道」 措定を弟子たちに
 第2節 一流を目指すには哲学 ・学問に関わる基礎的教養が必要である
 第3節 哲学 ・学問の概念をその成立の起源から説く
 第4節 学問体系としての哲学から個別科学の分化へ
 第5節 人類文化の最高形態としての哲学への研鑽過程を説く
 第6節 哲学の歴史的研鑽過程を分かる実力を身につけるために

第2章 哲学の形成の歴史的研鑽過程を説く

 第1節 「学問への道」 に必須の 「論理能力」 と 「大志」 を説く
 第2節 学問形成には学問力の基礎的研鑽が必要である
 第3節 学問 ・哲学は原点からの歴史性に学んでこそ措定できる
 第4節 学問 ・哲学はその発達史を一身の上にくり返すことが必然である
 第5節 ヘーゲルの説く 「学びの道」 の意義を説く
 第6節 武の道の育成過程は 武術の歴史の発達過程を一身の上にくり返すこと
      が必要である

【 第3編 】 認識の成立の過程性を説く

第1章 頭脳活動の究明の過程性を説く

 第1節 体系性を持った書物からの学びとは
 第2節 心理学の発達史を説く
 第3節 「いのちの歴史」 に 「ココロの歴史」 の起源がある
 第4節 心理学の誕生の基盤を説く

第2章 頭脳活動の育成の過程性を説く

 第1節 「アタマ」 と 「ココロ」 は育ちの中で創られる
 第2節 胎児期の実体の形成とその機能とは
 第3節 夢は社会 (環境) を反映して形成される
 第4節 哲学 ・学問 ・弁証法の学びの大事性を説く

第3章 認識の成立と社会の関係性を説く

 第1節 認識の原風景を形成する小社会とは
 第2節 夢としての像は社会 (環境) 的な反映を原基形態として描かれる
 第3節 像の内実=構造の成立過程を説く
 第4節 「認識とは五感覚器官を通して脳に描かれた像である」 とは
 第5節 感覚 ・感情 ・感性,像の重層化の過程を説く
 第6節 心の世界の発展を育む教育過程を説く

【 第4編 】 論理学から説く弁証法と認識論

第1章 弁証法の歴史的過程を説く

 第1節 弁証法の誕生からの変化・発展の過程を説く
 第2節 古代ギリシャで誕生した学問を創出する実力を養成するための弁証法
 第3節 弁証法の過程的構造への学びを説く
 第4節 「弁証法は自然 ・社会 ・精神の一般的な運動に関する科学である」 とは

第2章 認識論の歴史的過程を説く

 第1節 「弁証法と認識論の現象学 ・構造学」 とは
 第2節 “夢”講義に学ぶ心理学の真の発達史とは
 第3節 感性的認識の発展における過程的構造

第3章 弁証法の学びの構造を説く

 第1節 弁証法を学ぶための書物は新しいものが正しいとはいえない
 第2節 旧版 『弁証法はどういう科学か』 の 「あとがき」 に説かれていた重要な内容
 第3節 『弁証法はどういう科学か』 に学ぶとは

【 第5編 】 論理学の過程的構造を説く

第1章 世界観から 「哲学とは何か」 を問う

 第1節 季節の変化に応じて形成される感覚像 ・感情像
 第2節 弁証法に関わる基本の学習を説く
 第3節 世界観から論じる2つの正しい 「筋道(すじみち)」 とは
 第4節 観念論の立場から説く 「哲学とは何か」
 第5節 弁証法的唯物論の立場から説く 「哲学とは何か」

第2章 論理学の歴史性を説く

 第1節 学問の歴史性から説く 「現象学・構造学」
 第2節 学問は現象論 ・構造論 ・本質論としての体系性を持つ
 第3節 弁証法の学びの基本を説く ―〔本節から弁証法を武道で説く〕

第3章 論理学から 「心」 の論理構造を説く

 第1節 頭脳活動の形成過程への学びを問う
 第2節 技の形成に関わる過程性の構造を問う
 第3節 「心」 に関する専門家の見解を問う
 第4節 「心」 と 「気」 の論理構造とは

【 第6編 】 弁証法の過程的構造を説く

第1章 人間の一般的な生成発展の構造を説く

 第1節 人間体の形成に関わる過程性の構造を問う
 第2節 個としての人間の生成発展の過程的構造を問うことが必要である

第2章 生成発展の論理構造を説く

 第1節 人類の歴史性を問う意義とは
 第2節 物自体の生成発展の論理構造を解く
 第3節 人類の発展にとっての精神的文化の発展の意義
 第4節 「“夢”講義」 への学びの過程性

第3章 上達への過程的構造を説く

 第1節 体系化された書物と認識との相互浸透による学びの重層構造化とは
 第2節 上達への過程的構造を具体的に説く
 第3節 頭脳活動を創りかえる運動形態の創造とは
 第4節 「いのちの歴史」 から説く 「人間にとっての運動とは」

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 ・2年間の育児を振り返る
 ・2015年12月例会報告:ヘーゲル『哲学史』アリストテレス(精神の哲学・論理学)
 ・年頭言:歴史的岐路における道標としての学問の創出を目指して
 ・安保法制をめぐる議論から日本の課題を問う
 ・図式化にはどのような効用があるのか
 ・看護師と臨床心理士に共通した学び方――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(2)』の感想
 ・2016年1月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ストア派の哲学、エピクロスの哲学
 ・ケネー『経済表』を読む
 ・SSTを技化の論理で説く
 ・一会員による『学城』第13号の感想
 ・2016年2月例会報告:ヘーゲル『哲学史』新アカデメイア派、スケプシス派
 ・心理士教育はいかにあるべきか――一会員による『医学教育 概論(6)』の感想
 ・仮説実験授業を問う―アクティブ・ラーニングの観点から―
 ・一会員による『学城』第3号の感想
 ・新大学生に与える
 ・2016年3月例会報告:ヘーゲル『哲学史』新プラトン派
 ・6年目教師としての1年間を実践記録で振り返る―学級崩壊への過程を説く
 ・2016年4月例会報告:ヘーゲル『哲学史』中世哲学序論〜スコラ哲学
 ・専門家のあり方を問う――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(3)』の感想
 ・比較言語学誕生の歴史的必然性を問う
 ・『吉本隆明の経済学』を読む
 ・2016年5月例会報告:ヘーゲル『哲学史』学問の復興
 ・ブリーフセラピーを認識論的に説く
 ・夏目漱石の思想を問う
 ・コメニウスの歴史的意義を問う―『大教授学』をとおして
 ・オバマ米大統領の「広島演説」を問う
 ・2016年6月例会報告:ヘーゲル『哲学史』近代哲学の黎明
 ・心理士の上達に必須の条件――一会員による『初学者のための『看護覚え書』(4)』の感想
 ・夏目漱石の中・長編小説を読む
 ・2016年7月例会報告:ヘーゲル『哲学史』デカルト・スピノザ
 ・改訂版・観念的二重化への道
 ・ロックの教育論から何を学ぶべきか
 ・文法家列伝:ソシュール編
 ・2016年8月例会報告:ヘーゲル『哲学史』「悟性形而上学」第二部・第三部
 ・どうすれば科学的な実践が可能となるか――一会員による『科学的な看護実践とは何か(上)』の感想
 ・夏目漱石『明暗』の構造と結末を問う
 ・ルソーの教育論の歴史的意義を問う
 ・2016年9月例会報告:ヘーゲル『哲学史』バークリー〜ドイツの啓蒙思潮
 ・高校生に説く立憲主義の歴史
 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』を読む
 ・2016年10月例会報告:ヘーゲル『哲学史』ヤコービ、カント
 ・専門家教育には何が必要か――一会員による『科学的な看護実践とは何か(下)』の感想
 ・アダム・スミス『国富論』を読む
 ・2016年11月例会報告:ヘーゲル『哲学史』フィヒテ,シェリング,結語
 ・3年間の育児を振り返る
 ・近代教育学の成立過程を概観する
 ・2016年12月例会報告:ヘーゲル『哲学史』のまとめ
 ・年頭言:機関誌の発刊を目指して
 ・激動する世界情勢を問う
 ・『障害児教育の方法論を問う』から何を学ぶべきか―一会員による感想
 ・一会員による『学城』第4号の感想
 ・2017年1月例会報告:シュヴェーグラー『西洋哲学史』、ヘーゲル『哲学史』におけるカント『純粋理性批判』
 ・斎藤公子の保育実践とその背景を問う
 ・認識の形成がうまくいくための条件とは何か?――一会員による『“夢”講義(1)』の感想
 ・本来の科学的な教育とは何か
 ・2017年2月例会報告:カント『純粋理性批判』序文
 ・システムズアプローチを弁証法から説く
 ・一会員による『学城』第14号の感想
 ・ルソー『学問芸術論』を読む
 ・新大学生に説く「大学では何を如何に学ぶべきか」
 ・2017年3月例会報告:カント『純粋理性批判』緒言
 ・斉藤喜博から何を学ぶべきか
 ・重層弁証法を学ぶ――一会員による『“夢”講義(2)』の感想
 ・小中一貫教育を問う
 ・ヘーゲル『哲学史』を読む
 ・2017年4月例会報告: カント『純粋理性批判』先験的感性論
 ・文法家列伝:宮下眞二編
 ・改訂版 心理療法における外在化の意義を問う
 ・マルクス思想の原点を問う
 ・2017年5月例会報告:カント『純粋理性批判』先験的論理学の構想その他
 ・弁証法が技化した頭脳活動を味わう――一会員による『“夢”講義(3)』の感想
 ・教育の政治的中立性を問う
 ・日本経済の歴史を概観する
 ・2017年6月例会報告:カント『純粋理性批判』純粋悟性概念の演繹
 ・一会員による『学城』第15号の感想
 ・改訂版 続・心理療法における外在化の意義を問う
 ・2017年7月例会報告:カント『純粋理性批判』原則の分析論 緒言〜第2章第3節2
 ・ルソー『人間不平等起原論』の歴史的意義を問う
 ・夢の解明に必須の学問を学ぶ――一会員による『“夢”講義(4)』の感想
 ・ヒュームの経済思想――『政治論集』を読む
 ・現代日本の政治家の“失言”を問う
 ・2017年8月例会報告:カント『純粋理性批判』経験の類推
 ・障害児の子育ての1年間を振り返る
 ・新しい国家資格・公認心理師を問う
 ・経済学の原点を問う――哲学者としてのアダム・スミス
 ・2017年9月例会報告:カント『純粋理性批判』経験的思惟一般の公準その他
 ・徒然なるままに――40歳を迎えて
 ・過程的構造とは何か――一会員による『“夢”講義(5)』の感想
 ・〔改訂版〕新自由主義における「自由」を問う
 ・2017年10月例会報告:カント『純粋理性批判』反省概念の二義性
 ・続・徒然なるままに――40歳を迎えて
 ・教育実習生に説く人間観の歴史
 ・2017年11月例会報告:カント『純粋理性批判』先験的弁証論 緒言・第一篇
 ・南郷継正の人生は弁証法の弁証法的発展である――一会員による『“夢”講義(6)』の感想
 ・改訂版・初学者に説く経済学の歴史
 ・2017年12月例会報告:カント『純粋理性批判』序文と緒言